地球温暖化が問題視されている現在、
その主な原因となっているのが
化石燃料の使用による温室効果ガスの排出です。
近年では、カーボンニュートラル
といった言葉をよく耳にするようになりました。
そんな中、大きな注目を浴びているのがバイオ燃料。
環境にやさしく、
二酸化炭素の排出量を実質ゼロにできるということから、
その需要は日を追うごとに上がっています。
しかし、「そもそもバイオ燃料って何なの?」
と聞かれて、詳しく説明できる人はあまりいないかと思います。
きっとあなたも、そのうちの一人ではないでしょうか。
バイオ燃料は生物から造られた燃料で、
多くのメリットはありますが、
自然破壊などの深刻な問題も抱えています。
そこで今回は、バイオ燃料とは何か、
またそれに伴う問題点や解決策について、
できるだけ分かりやすく、お話させていただきます。
3つのバイオ燃料
バイオ燃料は植物や動物などを原料としてつくられます。
またその種類は主に3つあり、それぞれ原料や用途も異なります。
- バイオジェット燃料
- バイオディーゼル
- バイオエタノール
バイオジェット燃料
航空燃料として利用されるのが、
バイオジェット燃料です。
主に、微細藻類や木材チップ、
製材廃材などから作られます。
最近のニュースで、
ユーグレナという会社が開発したバイオジェット燃料が、
2021年の6月に、初の民間航空機のフライトに
成功したことでも注目を集めています。
バイオエタノール
バイオエタノールは、
食用油や木材、竹などの原料からつくられます。
その中で、最も多く使用されるものは、
トウモロコシとサトウキビです。
それらを発酵させ蒸留することで、
エネルギーとして利用することができます。
基本的にはガソリンの代わりに使用することを目的としています。
バイオディーゼル
ディーゼルエンジンの燃料として、
開発されたバイオディーゼルは、
ナタネ油などの植物油が主な原料です。
ボイラーや発電機、
トラック・重機など、
その利用価値は多岐にわたります。
従来の軽油と比べてみても、
基本的に燃費や走行性がほとんど変わらないので、
とても魅力的といえるでしょう。
また日本では環境やリサイクル面を考え、
使い終わった天ぷら油とメタノールを化学反応させ、
製造することが普及しています。
バイオ燃料の課題点
一見すると環境にもやさしく、万能にも思えるバイオ燃料ですが、
問題点がいくつかあるのも事実です。
- 食物の価格上昇
- 食料不足とのバランス
- 自然破壊と土地の確保
- 二酸化炭素の排出量
食物の価格上昇
まずは、トウモロコシや大豆などの食物を利用することで、
食料としての販売価格が上がってしまうという問題があります。
近年では、バイオ燃料の需要増加に伴ない、
それら原料の需給バランスに大きな影響を与えています。
トウモロコシの輸出量が最大の米国では、
その作付けが増加傾向である一方、
大豆は反対に減少しているということも問題視されています。
食料不足とのバランス
現在では、地球の人口増加に伴ない、
この先深刻な食糧不足に陥ることが予測されています。
その為、多くの食物をバイオ燃料に利用することで、
食料の供給が追いつかなくなる恐れがあります。
また食料の価格上昇により、貧しい国では、
より食糧難になる可能性がでてくるでしょう。
地球に存在する農地の面積には限りがあります。
ですから、原料の食物を利用する際、
その供給バランスをしっかりと考える必要があるのです。
加速する自然破壊
バイオ燃料の原料を生産するにことで、
深刻な森林破壊が加速しています。
インドネシアやマレーシアなどの東南アジアでは、
その原料となるパーム油を生産するにあたり、
既に広大な熱帯雨林が伐採され、大きな問題となっています。
また、ブラジルの中央部にある
セラードと呼ばれる貴重な草原地域では、
原料となるサトウキビを生産する為に、
その半分が失われています。
それと続くように、現在生産が拡大している大豆ですが、
その大豆畑の開発が進むことにより、
アマゾンの大規模な森林破壊も危ぶまれています。
二酸化炭素の排出量
二酸化炭素の排出量を抑える為に開発されたバイオ燃料ですが、
実際問題、それが本当に解消できているのか?
という疑問もあがっています。
なぜなら、原料となる
サトウキビやトウモロコシ・大豆などを生産する際、
多くの化石燃料などの他に、
様々な資源を必要とするからです。
原料からエネルギーにするまで、
それに伴う輸送や農業機械の使用、
またはエタノール生成によって
多くの二酸化炭素が排出されます。
結果的にその排出量が減るどころか、
増えているのではないかという声も上がっています。
そういうことになれば、まさに本末転倒と言わざるを得ません。
バイオ燃料の問題を解決する方法は?
バイオ燃料に伴う問題を解決する方法として、
今現在、以下の2つが有望視されています。
- 食料以外の原料をつかう
- 荒廃農地での植物栽培
食料以外の原料をつかう
1つ目の対策として、
バイオ燃料に使用する原料を
多年生作物にすることが挙げられます。
それらを利用すると、
トウモロコシや大豆などに比べ、
排出する二酸化炭素の量を、
8割も少なくできると言われています。
多年生作物とは、
根や茎の一部が枯れることなく、
何年も生存する植物です。
- ススキ
- ユーカリ
- ポプラなど
その種類は数多くあります。
また、大豆やトウモロコシより少ない面積で、
同じ量のエネルギーを得られることも
メリットの1つです。
荒廃農地での植物栽培
続いての対策は、
荒廃農地を利用する方法です。
アメリカにあるミネソタ大学の行った研究結果では、次のように言っています。
世界に存在する不毛な荒廃農地で、
様々な草原植物を栽培すれば、
世界中のエネルギー需要の大半は賄える。
またこのように、
栽培する植物を一定水準の品質で収穫できるように管理すれば、
環境保護や土壌の改善にもつながります。
それに加え、野生動物達の生息地も新たにできるというように、
大きな好循環を生み出すことでしょう。
まとめ
<バイオ燃料に伴う問題点>
- 世界的な食糧不足との兼ね合い
- 森林伐採や土地面積の確保
- バイオ燃料の生成に多くの化石燃料が必要
<問題の解決策>
- 食物原料を使用しない
- 荒廃農地の有効化
今回はバイオ燃料について、
あらゆる観点から説明させて頂きました。
現在世界では、持続可能な社会を目指し、
様々な取り組みが行われています。
その中でもバイオ燃料は必要不可欠な物と言えるでしょう。
ただ、今回の説明にもあった様に、
森林破壊や食物との競合といった、
厄介な問題を一刻も早く解消しなければいけません。
また、本当の意味で地球環境について考えると、
原料の見直しや、
多年生作物への転換を早期に図るべきといえます。
バイオ燃料は私たちの生活に、
まだ身近なものとは言えないかもしれません。
しかし、その使用目的や製造過程を知ることで、
地球の環境について、
改めて考えるキッカケになることになるでしょう。